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21-08-18 12:08
韓国では、大法院2000年7月28日宣告97フ2200判決以降、下記の5つの要件を満たす場合に均等侵害が成立するという法理が確立されている。すなわち、確認対象発明に特許発明の請求の範囲に記載された構成のうち変更された部分がある場合であっても、①両発明において課題解決原理が同一であること(以下、「第1要件」)、②当該変更によっても特許発明と実質的に同一の作用効果を示すこと(以下、「第2要件」)、③当該変更がその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰もが容易に着想できる程度のものでなければならないこと、④確認対象発明が特許発明の出願時に既に公知となっていた技術と同一の技術、又は通常の技術者が公知技術から容易に発明できた技術に該当しないこと、⑤特許発明の出願手続きにおいて確認対象発明の変更された構成が請求の範囲から意識的に除外されたものではないこと、を求めている。
最近、大法院は上記第1要件及び第2要件の判断基準をより具体化する判決を下した(大法院2021年3月11日宣告2019ダ237302判決)。
1. 事案の概要及び争点
「調理容器用着脱式取っ手」に関する発明の特許権者であるA社がB社を相手取って提起した特許権侵害訴訟において、特許法院は、B社の製品はA社の特許発明と比較して一部変更された部分はあるが、発明の課題解決原理が同一であり、作用効果が実質的に同一であり、通常の技術者であればこのような変更を容易に着想することができるという理由により、特許権均等侵害の成立を認めた。
最終審である大法院のこのような判断における主な争点は、均等侵害が成立するための第1要件と第2要件を満たすか否かであった。
2. 大法院の判断
大法院は、均等侵害の第1要件と関連して、「侵害製品と特許発明の課題解決原理が同一であるか否かを判断するにおいては、請求の範囲に記載された構成の一部を形式的に取り出すのではなく、明細書における発明の説明の記載と出願当時の公知技術などを参酌し、先行技術と対比してみるとき、特許発明に特有の解決手段が基づいている技術思想の核心が何であるかを実質的に探求して判断しなければならない」と判示した。
また、均等侵害の第2要件と関連しては、「作用効果が実質的に同一であるか否かは、先行技術で解決されていなかった技術課題であり、特許発明が解決した課題を、侵害製品も解決できるかを中心に判断しなければならない。したがって、特許発明の技術思想の核心が侵害製品でも具現されているのであれば、作用効果が実質的に同一であるとみなすのが原則である。しかし、上記のように技術思想の核心が特許発明の出願当時既に公知となっていた場合には、当該技術思想の核心が特許発明に特有なものであるとはいえず、特許発明が先行技術で解決されなかった技術課題を解決したともいえない。このような場合、特許発明の技術思想の核心が侵害製品に具現されているかどうかによって作用効果が実質的に同一であるか否かを判断することができず、均等であるかどうかが問題視されている構成要素の個別の機能や役割などを比較して判断すべきである」と判示した。
本事案において、大法院は、上記原則に基づいて判断してみると、A社の特許発明が有する取っ手の作動上の便宜性及び安全性に関わる技術思想は、多様な先行発明に公開されていることが分かり、A社の特許発明の作用効果がB社の製品と実質的に同一であるか否かの判断に、上記技術思想の具現可能性を基準とすることはできず、互いに異なる構成要素の個別の機能や役割を比較して決定すべきであると判断した。さらに、比較の結果、このような構成要素は容易に変更することができず、作用効果も異なると判断し、特許法院の判決を破棄した。
3. 意義及び示唆点
今回の大法院の判決は、均等侵害に関する第1要件及び第2要件に対し、具体的な判断基準を提示したことに意義がある。大法院は、第1要件と関連しては、課題解決原理の同一性を判断するにあたって、明細書の記載や先行技術を考慮して特許発明の技術思想の核心を明確に把握すべきであり、第2要件と関連しては、特許発明の技術思想の核心が特許発明の出願当時既に公知となっていた場合には、上記技術思想が侵害製品に具現されているかどうかを基準に作用効果の同一性を判断することはできず、均等であるか否かが問題視される対応構成要素の個別の機能や役割などを比較して決定すべきである、と判示している。
本判決は、貢献度(技術発展の寄与度)の高い発明はより広く保護し、そうでない発明はより狭く保護することが特許侵害判断の大原則であることを考慮し、明細書の発明の説明の記載と出願当時の公知技術などを参酌して先行技術と対比してみるとき、特許発明に特有の解決手段が基づいている技術思想の核心がどれほど新しいものであるかによって、均等侵害を広く認めることもでき、狭く認めることもできるという趣旨であると解釈される。