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22-01-14
[事件の概要] 有名スポーツ用品ブランドであるASICS KOREA(以下“ASICS”とする)は、2018年1月、世界的なテニスプレーヤーであるノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic)とテニスシューズ等に彼の名前を使用する契約を締結した。ASICSは同年3月から新たにリリースした男性用テニスシューズに“ゲル-レゾルーション 7 NOVAK,”、“COURT FF NOVAK”等、“ノバク(NOVAK)”を付してSNSやホームページ、ショッピングモール等で販売し、その過程でノバク・ジョコビッチの写真とともに製品を広報した。原告はASCISの“NOVAK”使用行為が自身の登録商標権“NOVAK”を侵害していることを理由に損害賠償を請求したが、特許法院はこれを棄却した(特許法院 2020ナ2196;確定)。
[判決の要旨] ① ASICSは世界的な有名スポーツ用品ブランドであり、本件製品にはASICS固有のブランド表示と模様が刻まれているので、一般需要者は本件製品がASICSにより生産された物品であることを容易に確認できる点、② 本件製品は既存のASCIS製品名に“NOVAK”が含まれたもので、普通の運動靴ではなくテニスシューズを購入しようとする一般需要者であれば、“NOVAK”という表示から当然ノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic)を思い浮かべるはずである点、等の事情を総合して考慮するとき、一般需要者や取引者の立場から原告の“NOVAK”商標権と商品の出所に関して誤認・混同を引き起こすおそれがあるとはいえない。したがって、 ASICSによる“NOVAK”の使用は、登録商標“NOVAK”と類似する標章を使用して原告の登録商標権を侵害した行為と言うことはできない。
本判決は、商品出所の混同を防止しようとする商標法の目的に照らし、商標権侵害の要件である商標の類否を判断するにおいても、実際の取引界で一般需要者や取引者の立場から商品出所の誤認・混同が発生するか否かを考慮しなければならない、と判示した点で意味のある判例であると判断される。