Search
Professionals
22-04-22
[事件の概要] 「セラミック溶接支持具」に関する特許に対する特許無効審判において、特許審判院は、特許を無効とする審決を下し、その後上級審である特許法院も特許審判院の審決を維持したが、最終審である大法院は、下級審とは異なり特許発明の進歩性を否定し難いという理由で原審判決を破棄差し戻した(大法院2021.12.10宣告、2018フ11728)。
[判決の要旨] 本件特許発明は、SiO2、Al2O3、MgO及びCaOを主成分とするセラミック溶接支持具に関するもので、耐火度をSK8~12、焼成密度を2.0~2.4g/㎤、吸収率を3%未満に限定している。
これに対し、先行発明は、本件特許発明と同一の主成分を有する溶接支持具を公開しつつ、耐火度はSK11~15、気孔率は20~40%であることを開示している。すなわち、本件特許発明と先行発明は耐火度の範囲に差異があり、先行発明は焼成密度と吸収率について何ら記載がない。
ただし、先行発明には気孔率が20%未満になることは望ましくないことが記載されており、低い気孔率に対する否定的教示が含まれている。ところで、気孔率は吸収率と比例関係にあることが知られているため、通常の技術者が先行発明の記載から気孔率を20%未満に低下させ、結果的に気孔率と比例関係にある吸収率を3%未満に低下させることに想到するのは容易ではない。
さらに、通常の技術者が先行発明から本件特許発明のような低い吸収率を採択することは、先行発明の耐火度と気孔率との有機的結合関係を害するだけでなく、それによる効果を予測できるだけの資料も先行発明にはない。
したがって、本件特許発明の進歩性を先行発明にもとづき否定することはできない。
[判決の意味] 特許発明の進歩性判断において、構成要素間の有機的結合関係と先行発明の否定的教示等を慎重に考慮し、事後的に判断しないように注意すべきであるという趣旨の判決である。