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22-07-21
パラメータ発明とは、新たに創出した物理的、化学的、生物学的特性値を用いるか、又は複数の変数間の相関関係を用いて発明の構成要素を特定する発明をいう。大法院は、2021年12月30日に宣告した2017フ1298判決を通して、新規性の判断方法と進歩性の判断方法をそれぞれ区別して説示し、特に進歩性判断の明確な基準を提示した。
事件の要旨及び大法院の判示内容
本件特許パラメータ発明とは、新たに創出した物理的、化学的、生物学的特性値を用いるか、又は複数の変数間の相関関係を用いて発明の構成要素を特定する発明をいう。大法院は、2021年12月30日に宣告した2017フ1298判決を通して、新規性の判断方法と進歩性の判断方法をそれぞれ区別して説示し、特に進歩性判断の明確な基準を提示した。発明は、基材と脆性材料の微粒子をガス中に噴射させたエアロゾルを当該基材に衝突させて形成される膜状構造物とを含む複合構造物に関するものだ。本件特許発明が解決しようとする課題は、製膜領域の境界付近及び基材の端部付近に加えられる応力を緩和して膜状構造物の剥離と崩れを防止することである。この課題を解決するための手段として、本件特許発明の請求項は、「端部と最外部との距離」と「平均膜厚」という概念を導入し、これらの間の比率が所定値を有するという新たなパラメータを限定することを特徴とする。
当該特許発明に対する無効審判で、特許審判院と特許法院はいずれも特許は無効と判断したが、これに対する上告審で大法院は特許発明の新規性及び進歩性を認め、次のように具体的に判示した。(1)先行発明に「平均膜厚」、「端部と最外部との距離」、「この距離と平均膜厚との比率」が明示的に記載されておらず、先行発明に開示された膜構造物の端面のプロファイルから換算により先行発明が本件特許発明と実質的に同一かどうかを知ることができないので本件発明の新規性が認められる。(2)先行発明と特許発明は膜構造物の剥離防止という共通の課題を有しているが、先行発明には端部や最外部に加えられる応力を緩和することによって課題を解決するという認識がないのに対し、本件特許発明には、「端部と最外部との距離」と「平均膜厚」との比率を用いて端部に蓄積された応力による剥離を防止するという技術的意義を有し、これにより改善された剥離防止効果が明細書にデータとして説明されているので、本件特許発明の進歩性が認められる。
パラメータ発明の新規性と進歩性判断
本大法院判決を考慮して、パラメータ発明の新規性、進歩性の判断基準を以下にまとめた。
1. 新規性
パラメータ発明をこれとは異なる性質又は特性等により、物又は方法を特定している先行発明と対比するとき、特許発明の請求の範囲に記載された性質又は特性が、他の定義又は試験測定方法によるものに換算可能であり、換算の結果、先行発明の対応するものと同一である場合、又は特許発明の明細書の詳細な説明に記載された実施形態が先行発明の具体的な実施形態と同一である場合には、両発明は実質的に同一なので、新規性が否定される。
2. 進歩性
パラメータ発明と公知の発明との差異がパラメータによって限定された構成のみである場合、発明の明細書の記載及び出願当時の通常の技術者の技術水準を総合的に考慮し、パラメータが公知の発明とは異なる課題を解決するための技術手段としての意義を有し、これにより特有の効果を有すると認められれば進歩性は否定されない。一方、パラメータの導入自体については上記のような技術的意義を認めることができないとしても、発明が新たに導入したパラメータを数値で限定する形態をとっている場合には、限定された数値範囲の内外で顕著な効果の差異が生じたり、その数値限定が公知の発明とは異なる課題を達成するための技術手段としての意義を有し、その効果も異質であれば進歩性が認められる。
大法院判決の意義
本判決は、パラメータ発明の新規性と進歩性を認めた大法院事件であるというだけでなく、新規性と進歩性の判断基準を区別して各々説示した点に意義があると思われる。