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23-02-16
当所は、米国の人工知能開発者であるスティーブン·テイラー教授の人工知能(以下、「DABUS」)が創作し、全世界18ヶ国に出願した発明のうち韓国出願(以下、「本願」)を代理している。現在18ヶ国のうち南アフリカ共和国でのみDABUSを発明者として記載した出願に対し特許が許与されており、米国、イギリス及びドイツなどほとんどの国では特許庁の決定に対する不服手続きが進められている。
韓国特許庁は最近、本願が特許法で定めている発明者の記載方式、すなわち発明者には人間を記載しなければならないにもかかわらず人間ではなく人工知能の名前を記載したことを理由として、本願に対して無効処分を下した。しかし、このような特許庁の無効処分の適法性についてはいくつかの疑問がある。
まず、米国などの他国の立法例とは異なり、韓国特許法は「発明」、「特許発明」及び「実施」を定義しているだけで、「発明者」については定義していない。そこで特許庁は、本願に対し、特許法第33条第1項の「発明をした者またはその承継人は、この法で定めるところにより特許を受けることができる権利を有する」という規定にもとづき、「発明者」は人間でなければならないと判断した。しかし、当該特許法規定は、無権利者の権利取得を制限するための規定であるにすぎず、人間以外の発明者を排除しようとする意図を有すると解釈することはできない。
また、本願の発明者として記載された人工知能「DABUS」は、本願発明の創作に実質的に寄与した唯一の存在であり、「発明者は、技術的思想の創作行為に実質的に寄与しなければならない」という韓国大法院の判決例に照らして、本願発明の発明者としての要件を満たしている。それにもかかわらず、実質的に本願の発明者をDABUSから人間に補正するよう求めている特許庁の無効処分は、実質的に発明者でない者を発明者として記載することを強制して本願に拒絶事由や無効事由を有するようにさせるものであり、大衆を誤導(misleading)する恐れがあると思われる。
つまり、本願に対する特許庁の無効処分は、人工知能による発明がいわゆる特許要件を満たして、特許として保護を受けられる水準のものであるかどうかを綿密に検討したというよりは、単に人間のみが発明者となり得るという立場を宣言したものであり、このような特許庁のスタンスは、人工知能を活用した技術開発に水を差す結果となり、また発明の保護·奨励を通じて産業の発展に貢献するという特許法の目的にもそわないと思われる。
社会の各分野で人工知能の開発及び活用が爆発的に増加している昨今の状況を考慮すると、人工知能により生まれる発明の保護方法を整備するためにも、当該無効処分は再考すべきである。当所は現在、当該無効処分に対して行政訴訟を提起したばかりなので、進展があり次第newsletterにてお伝えする。