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23-11-28
韓国には証拠収集制度が設けられていないため、IP侵害訴訟で訴訟当事者が侵害行為を立証するための証拠を確保することが容易ではなかった。一例として、2019年にLG化学(現LGエネルギーソリューション)はSKイノベーションを相手取ってバッテリーに関する営業秘密侵害訴訟を韓国でなく米国で提起したが、これには、証拠の確保に有利な米国で訴訟を進めたほうが実体的真実発見のために有利であるというLG化学の戦略的判断があったという分析がある。このような背景に加えて、2019年に施行された懲罰的損害賠償制度、及び2020年に改正された損害賠償額の算定方式の実効性を確保するためにも、新たな証拠収集制度が必要であるという意見は持続的に提起されていた。
そこで、2020年と2021年に3人の国会議員が各々韓国型証拠収集制度に関する特許法改正案を発議し、特許庁は国会と共に現実的な韓国型証拠収集制度の導入を推進してきた。
現在導入推進中の韓国型証拠収集制度には、法院が指定した専門家が侵害場所で侵害の立証及び損害額の算定に必要な資料を調査し、これをまとめた結果報告書を証拠として使用する専門家事実調査と、訴訟初期に当事者に証拠の滅失と毀損防止を命令する資料保全命令と、法院職員の立ち会いのもと訴訟当事者が証人を尋問するようにする証言録取、及び専門家が専門家事実調査で知得した事実に対して秘密保持を課す専門家の秘密保持規定とが含まれている。
特許庁は約70回の意見聴取過程を経て、最近韓国型証拠収集制度の最終改正案を設けた。最終改正案にて特許庁は当初の国会審議案に対する「専門家事実調査の開始要件を強化する必要がある」、「被調査者の防御権保障が不足している」などの産業界の意見を反映して、専門家事実調査の開始要件として、特許権の「侵害可能性」を「相当な侵害可能性」に強化するとともに、証拠を収集する他の手段がない場合に開始できるように限定する一方、被調査者が専門家事実調査の開始決定に対して意見陳述を行ったり、専門家を忌避することもできるだけでなく、専門家による営業秘密の漏洩が生じた場合の罰則も強化して被調査者の防御権保障に配慮した。
特許庁は最終改正案に対する業界及び専門家の意見をまとめた上で、立法手続きに入る予定である。