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23-05-11
2021年に韓国のD製薬会社が競合他社の市場参入を阻止するために、虚偽の生同性試験データを提出して胃腸薬アルビスDに対する食薬処の許可及び特許を得、これに基づいて競合他社に特許侵害禁止訴訟を提起した事実が知らされると国内で大きなイシューとなった。これに対して公正取引委員会は、D製薬会社の行為を不公正取引行為とみなし是正命令と課徴金を賦課した。また、当該アルビスDに対する食薬処の許可は医薬品生産管理義務違反により取り消された。
一方、D製薬会社の特許に対して特許庁は職権で無効審判を請求し、特許法上虚偽行為の罪を理由に検察に捜査依頼を要請した。公正取引委員会の調査結果、当該特許出願の際にD製薬会社は一つの有効成分の粒度数値に対してしか肯定的な生同性試験データを得られなかったにもかかわらず、粒度数値の範囲を捏造した虚偽生同性試験データを明細書に含めることで、有効成分の粒度範囲が広い特許権を獲得したことが明らかになった。これに対して特許庁は、明細書に含まれた一部のデータは捏造されたものなので、これに関連する請求項の実質的な効果を認めることができないという趣旨で、発明の説明の記載不十分を理由に無効審判を請求した。しかし、この無効審判でD製薬会社は故意に記載した虚偽データを明細書から削除し、これに関連する請求項も削除し、有効なデータ及びこれに基づく請求項のみを残す訂正請求を通して特許権を維持した。
現行特許法は、不正な行為で特許を取得した場合を別途の無効事由として規定していないので、不正な行為があっても上記のように発明の説明の記載不備を理由に無効審判を請求するしかなく、この場合、特許権者が虚偽データ部分のみを削除する訂正請求を通して特許を維持することを制度的に防ぐことはできない。
これと関連して、2023年2月、出願人が虚偽や不正な行為で特許を受けた場合、審査官は特許全体を無効とする審判を請求できるようにし、特許権者は虚偽などの不正な行為で受けた特許に対して訂正請求及び訂正審判を請求できないようにする内容の特許法改正案が発議された。速やかな法改正により特許制度の公正性がさらに高まることを期待する。