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23-08-28
特許法院は最近、結合商標の類否を実使用態様、取引実情等を考慮して全体観察により判断し、一部共通して含まれる要素であるにもかかわらず非類似であると判断する非常に意味深い判決(特許法院2023. 3. 10. 宣告 2022ホ3199 判決)をくだした。これは当所の担当事例であり、出願商標と先登録商標の類否を判断するにあたり、特許庁及び特許審判院が一般的に適用している分離又は要部観察に対する判断を覆し、全体観察により判断した点で意義深い判決であるといえる。
韓国特許庁では出願商標の登録可能性を審査する際、図案と文字又は複数の単語からなる結合商標の場合、各部分が不可分的に結合されていない以上、分離又は要部観察によって類否を判断している。したがって、二つの商標の一部分が共通している場合には、他の差異にもかかわらず相互に出所の誤認又は混同を引き起こすおそれがあるという結論に達することになる。ところが今度の事例において特許法院は、出願商標及び先登録商標の実使用態様、取引実情等を考慮し、結合商標の一部分を要部として認めるだけの証拠がない場合には、全体観察により出願商標と先登録商標の類否を判断しなければならないと判示した。
事件の要旨及び特許法院の判示内容
本件は出願商標“”に対する事件であり、特許庁の審査段階にて出願商標は先登録商標“”の要部である“SHEPHERD”が共通するという理由で拒絶決定された。その後出願人により提起された拒絶決定不服審判においても、これまでの実務のとおり拒絶決定と同一の趣旨で先登録商標と類似することを理由に特許審判院は審判を棄却した。
しかし、特許法院は下記のように、結合商標の一部分を要部とみなすことはできないと判断し、特許審判院の審決を覆した。
- 出願商標“”は特定部分が特異な書体や大きさで表示されているわけではなく、すべて同一書体で平易に表示されている。
- 出願商標の“UNDERCOVER”部分は‘秘密裡に行う’の意味をもつことを考慮すれば、指定商品との関係において識別力が低いということはできない。
- 出願商標の“SHEPHERD”は、“HUGO BOSS SHEPHERD Jacket”、“Anderson and shepherd jacket”などの衣類等と関連して製品名としても使用されている。したがって“SHEPHERD”部分の識別力が特別に高いということはできない。
- 出願人は本件出願商標“”を全体として使用しており、“SHEPHERD”部分のみで呼称されるといえるだけの資料もない。
- 先登録商標“”が文字“SHEPHERD”部分のみで国内に知られている事情もない。
特許法院判決の意味
特許法院は今回の判決を通して、結合商標の一部分が分離して認識されるという特別な事情がない限り、分離または要部観察ではなく、全体観察を通して商標の類否を判断しなければならないと判断した。このように、結合商標である出願商標が先登録商標の一部と類似する場合、分離または要部観察により拒絶されたこれまでの実務とは異なり、実使用態様、取引実情などを考慮して全体観察により類否を判断したところに意義がある。
しかし、特許庁と特許審判院では依然として実務的に分離または要部観察を指向しているので、実際に業界で結合商標の一部の単語がありふれて使用されているか否か、一部の単語の意味が商品との関係において識別力を有するか否か等を考慮して、登録可能性を綿密に検討する必要があるものと思われる。