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23-08-28
韓国不正競争防止法第2条第1号ガ目、ナ目は他人の商品標識及び営業標識に対する誤認・混同行為を、ダ目は著名標識の識別力・名声損傷行為を不正競争行為と規定している。ところで、改正前の不正競争防止法及びその施行令は、不正競争防止法第2条第1号ダ目の不正競争行為に対してのみ先使用権の例外を認め、他人の商品標識等が国内に広く認識される前からそれを自身の商品標識等として使用してきた場合でも、ガ目及びナ目の不正競争行為に対してはその例外が認められなかった。
ところが、2023年3月28日に公布され、2023年9月29日から施行される不正競争防止法により、第2条第1号ガ目ないしダ目の不正行為に先使用権の例外が全て認められ、他人の商品標識、営業標識及び氏名、商号、商標、商品の容器・包装、そのほか他人の商品又は営業であることを表示した標識が国内に広く認識される前から、その他人の標識と同一又は類似の標識を不正の目的なく継続して使用する場合、不正競争行為から除外できるようになった。
特許法、商標法及びデザイン保護法の先使用権制度の比較
不正競争防止法が先使用権の例外を全面的に認める前から韓国の商標法、特許法及びデザイン保護法には先使用権に関する規定が既に設けられていた。関連する各法令の内容を比較すると次の通りだ。
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商標法第99条
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特許法第103条
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デザイン保護法
第100条
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不正競争防止法
第2条
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先使用権
要件
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①他人の登録商標と同一・類似する商標をその指定商品と同一・類似する商品に使用する者であること ②不正競争の目的なく、他人の商標登録出願前から国内で継続して使用していること ③商標を使用した結果、他人の商標登録出願時に国内需要者間でその商標が特定人の商品を表示するものとして認識されていること |
①特許出願時にその特許出願された発明の内容を知らずにその発明をしたか、その発明をした者から知得した場合 ②国内でその発明の実施事業をしているか、これを準備している者であること |
①デザイン登録出願時にそのデザイン登録出願されたデザインの内容を知らずにそのデザインを創作したか、そのデザインを創作した者から知得した場合 ②国内でその登録デザイン又はそれと類似のデザインの実施事業をしているか、その事業の準備をしている者であること |
①他人の商品標識や他人の営業標識が国内に広く認識される前から使用していること ②その他人の商品標識や他人の営業標識と同一又は類似する標識を不正の目的なく継続して使用していること ③先使用権が認められる者の承継人として不正の目的なく継続して使用していること |
先使用権
内容
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当該商標をその使用する商品に対して継続して使用することができる通常使用権 |
実施又は準備中の発明及び事業目的の範囲内でその特許出願された発明の特許権に対する通常実施権 |
実施又は準備中のデザイン及び事業の目的範囲内でそのデザイン登録出願されたデザインのデザイン権に対する通常実施権 |
当該商品標識や営業標識を継続して使用することができる権利 |
零細商人の
先使用権
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①自身の氏名・商号等人格の同一性を表示する手段を商取引慣行に従って商標として使用する者であること ②不正競争の目的なく、他人の商標登録出願前から国内で継続して使用していること ③認識度不要 |
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混同防止
請求権
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商標権者や専用使用権者は、先使用に対する権利を有する者に、その者の商品と自身の商品との間で出所の誤認や混同を防止するのに必要な表示をするよう請求することができる。 |
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国内で広く知られている商号又は標章等を保有する者は、先使用に対する権利を有する者に、その商品又は営業と自身の商品又は営業との間で出所の誤認や混同を防止するのに必要な表示をするよう請求することができる。 |
(1) 先使用権の主体
特許法とデザイン保護法は、法制定時から先使用者の実施権を認め、法文の構造が極めて類似している。両法はいずれも出願時にその出願された発明や創作の内容を知らずにその発明や創作をした者、又は、その発明や創作をした者から知得して国内でその発明や創作の実施事業をしているか、これを準備中の者は、その実施又は準備している発明や創作及び事業目的の範囲内で、その出願された発明の特許権や創作のデザイン権に対して通常実施権を有する。
特許法及びデザイン保護法では発明や創作の実施事業をする者のみならず、事業を準備中の者にも通常実施権を認めているが、商標法では実際に使用している者にのみ先行使用権が認められると規定されている。また、不正競争防止法上の先使用権の場合、他人の商品標識や他人の営業標識が国内に広く認識される前から使用していることを要件としていることに照らしてみるとき、商標法上の先使用権は実際に使用している者に限って使用中の商品標識や営業標識を継続して使用する権利が認められるものと解釈することができる。
(2) 零細商人のための先使用権
特許法とデザイン保護法にはこれに関する内容が特に規定されていない。
商標法は第99条第2項に零細商人のための先使用権を規定している。商標法第99条第1項の先使用権と比較すると、商標法第99条第1項の先使用権は、使用により特定人の商品を表示するものと認識されていることを要求し、当該商品の関係取引圏内に属する相当数の構成員に当該商標が特定出所の商品標識として認識された状態を条件としているが、第99条第2項の先使用権は、このような認識度を条件としていない。これは局地的に営業活動を行う零細商人の特性に基づいて零細商人を保護するためだ。
不正競争防止法は、零細商人のための先使用権を別途規定しているとはいえないが、先使用権と関連して他人の商品標識や他人の営業標識を使用してきた者に対し、使用の結果特定人の標識と認識されていることを要求していないので、零細商人のためにも適用可能なものと解釈される。
(3) 混同防止請求権
特許法とデザイン保護法にはこれに関して特に規定がない。
商標法では、第99条第1項により商標を使用する権利を有する者に、その者の商品と自身の商品との間で出所の誤認又は混同を防止するのに必要な表示をするよう請求することができる混同防止請求権が商標権者に付与される。不正競争防止法では、第3条の3により、第2条第1号ガ目又はナ目の他人は、第2条第1号ガ目又はナ目の各号に該当する者に対し、その者の商品又は営業と自身の商品又は営業との間で出所の誤認や混同を防止するのに必要な表示をするよう請求できるよう規定している。
法改正の意義
今回の不正競争防止法の改正前から韓国の特許法、商標法及びデザイン保護法には先使用権制度が設けられており、知的財産権者の権利行使と正当な先使用権者の保護がバランスを維持していた。不正競争防止法の改正により、知的財産権に関する韓国の法令が全体的に一貫性を保つことになり、特に、先使用権を有する商標を使用している先使用権者に対して、第三者が登録商標権に基づく権利主張をしてきた場合には商標法により、不正競争行為の主張をしてきた場合には不正競争防止法により、それぞれ先使用権の例外が認められるようになり法的空白が除去された点に意義がある。