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24-02-27
当所が担当した事件において、最近特許法院が結合商標の類否判断をするにあたり、取引実情を考慮して全体観察により判断し、一部共通して含まれている要素があるにもかかわらず非類似とする判決(特許法院2023. 12. 6. 宣告2023ホ11425判決)をくだした。これはこれまで出願商標と先登録商標の類否判断において、特許庁及び特許審判院が一般的に適用してきた分離又は要部観察にもとづく判断を覆す意義深い事例である。
韓国特許庁は出願商標の登録可能性を審査する際、図案と文字またはいくつかの単語からなる結合商標に対しては、各部分が不可分的に結合されていない限り、分離または要部観察により商標の類否を判断している。したがって、二つの商標の一部分が共通している場合には、たとえ他の部分に差があるとしても相互に出所の誤認・混同をまねくおそれがあるという結論に帰結してきた。ところが、今回の事例を通して特許法院は先登録商標の取引実情等を考慮し、結合商標の一部分を要部と認めるだけの証拠がない場合には、全体観察により出願商標と先登録商標の類否を判断するとした。
事件の要旨及び特許法院の判示内容
本件は出願商標“”に関する事件で、特許庁審査段階にて出願商標は先登録商標1“”、2“”、3“”の要部である“REIGN”と共通することを理由に拒絶決定された。その後、出願人が提起した拒絶決定不服審判においても特許審判院は従来の実務と同様に拒絶決定と同一な趣旨で先登録商標と類似することを理由に審判を棄却した。
しかし、特許法院は次のように結合商標の一部分を要部と認めることはできないと判断し、特許審判院の審決を覆した。
— 商標中に要部といえるだけの部分がない場合、全体観察の原則によって類否を判断しなければならない。
— 先登録商標2“”の文字部分‘REIGN’は標章全体に占める割合が高いとはいえず、提出された証拠によれば先登録商標2“”の文字部分‘ATLANTA REIGN’はe-スポーツチームの名称であり、標章全体が商品等に付されて使用されている点を考慮するとき、文字部分‘REIGN’のみを要部とみなしえる取引実情が存在するとはいえない。
— 先登録商標1“”において文字‘ATLANTA’は顕著な地理的名称に該当するが、全体としてe-スポーツチームの名称として使用されている取引実情を考慮するとき、文字‘ATLANTA’と‘REIGN’が結合して全体として本来の地理的名称を離れ、新たな観念を形成しているということができる。
— 先登録商標3“”は提出された証拠によれば、取引社会でコンピューターゲーム用ソフトウェアと関連して全体として呼称されているので、需要者に文字構成全体として認識されているものと思われる。
— したがって、本件出願商標と先登録商標1、2、3を全体観察の原則によって対比するとき、外観、呼称、観念がすべて異なり全体として類似しない。
特許法院判決の意義
特許法院は今回の判決を通し「取引実情を考慮して結合商標中に要部とみなしえる部分がない場合には、全体観察を通して商標の類否を判断しなければならない」とした。したがって、これまで分離または要部観察により機械的に類否を判断してきた特許庁と特許審判院の判断基準が、先登録商標が全体として使用されている取引実情までをも考慮して需要者の混同可能性を考慮する、実質的な類否判断へと変化することが期待される。